建設関係の企業様に対し、FrascoAIを用いた生成AI活用の検証支援を実施させていただきました。本記事ではFrascoAIでの検証作業の進め方を紹介します。

実施の背景

建設現場では物理的な事故(けがや死)と隣り合わせのため、危険予知によるリスク低減が必須となっており、本案件の企業様では安全リスクアセスメントのプロセスを導入しています。このプロセスでは危険源の特定と評価を行い、事前にリスクとなる事象を明確化し、さらに抽出したリスクに対しての低減対策を検討します。これにより作業員の安全上のリスクを事前に共有し、回避することを目的としています。

上記プロセスは現場リーダーによって行われますが、毎日の作業に対して実施するため、現場リーダーの負担となっていました。そのため、現場リーダーの負担軽減やリスク低減を目的とした生成AIの活用可能性に対する検証を実施しました。

検証の進め方

検証は下図の流れで進めました。

検証の進め方 フロー図
  1. 検証内容の決定(開始)

    検証すべき内容を明確にし、目標を設定する

  2. 検証

    設定した目標に基づいて、具体的な検証を実施する

  3. 検証結果の共有

    検証結果を顧客と共有する

  4. フィードバックとディスカッション

    次の検証に向けた、フィードバック及びディスカッションを実施する

  5. 検証内容の決定

    次の検証内容を決定する

生成AI活用の有効性については、お客様が抱える課題やビジネス上の目的を踏まえて確認していく必要があります。

そのためには、生成AIの検証結果をお客様に確認してもらいながら有効性を判断する必要があります。また、対処すべき課題の優先度や取りうるワークアラウンドもビジネス状況や運用に依存するため、お客様と相談しながら検証を進めていくことが重要です。

そのため、上記に示したように検証結果の共有とディスカッションを密に行いながら検証を進めました。また、そのディスカッションにおいては実際に安全作業管理に携わっているかたにも参加いただいております。

検証内容

今回の検証内容は下記です。

目的

生成AIによるリスクアセスメントシートの一部項目の生成の可否検証と、その手法の確認

検証項目
  • 「作業手順」をインプットとし、下記項目を生成AIで生成することが可能か?

    • 危険源

    • 想定される危険事象

    • リスクの見積もり

    • リスク低減対策

  • 生成した内容の評価

FrascoAIでの検証作業

検証はACCESSのFrascoAIを用いて実施しました。
FrascoAIでは、RAG(Retrieval-Augmented Generation)を実現するためのLLMの活用やベクトル検索といった処理を、ノーコードで構築することが可能です。

下図はノーコードで生成AIの処理を定義している画面です。このようにグラフで表現される一連の処理をFrascoAIでは「フロー」と呼んでいます。FrascoAIを活用することによって生成AIの様々な活用を低コスト、短時間で試行錯誤することが可能となります。

FrascoAI フロー詳細画面

LLM単体による出力内容の確認

まずはLLMへのプロンプトを工夫することによってLLM単体による出力を確認しました。具体的には下記の設定で出力を確認しています。

FrascoAI フロー詳細画面のグラフ
inputがLLMを経由してoutputする処理のグラフ
システムプロンプト
  • 「危険源」の一覧、及び工事現場の危険予知向けという背景、「高さ・重さ・鋭利・回転・段差」で約8割の災害が発生している知識

  • 出力として関連する危険源とその重みを生成するように指示

入力プロンプト

「工事」種別、「作業内容」

上記の確認はFrascoAIで入力(input)を直接LLMに渡し、LLMの出力を最終出力(output)に渡すグラフをUI上で指定することで実現できます。システムプロンプトはLLMノード(緑色のブロック)の設定値として指定します。この処理をグラフとして表現したものがこの図です。

また、出力は複数の入力に対して確認することが必要ですが、FrascoAIではそのような複数の入力に対して上記のフローをバッチ処理することが可能です。

FrascoAI データセット画面

文献を参照することによる出力内容の確認

LLM単体による生成では、出力の背景となる情報がLLMに対して与えられていません。そのため危険源の根拠が不明となっており、妥当性のある出力を得ることが難しいという課題がありました。この課題に対する対処としては「危険源」を選択する際に、工事、内容に関する類似する過去事例等を知見(ノウハウ)として入力することで、事象の背景や、ノウハウとして不足している事項を補完する方式が考えられます。

FrascoAI フロー詳細画面でのグラフの図
LLMがsearch(ドキュメント検索)を参照するグラフ

具体的には入力から危険源傾向をまとめたドキュメントの記述のうち、入力内容に最も近いと判定されたデータをLLMに追加情報として与えます。LLMはこの情報を加味したうえで危険源を生成します。

文献を参照する仕組みもFrascoAIを用いると簡単に構築することができます。具体的には図のようなグラフを組み上げることで実現できます。ここではドキュメント検索ノード(青色のブロック)により文献を参照しています。これにより、入力をもとに危険源傾向をまとめたドキュメントから関連する内容を抽出し、後段のLLMノードにその情報を引き渡しています。結果としてLLMノードでは、その情報を加味したうえでLLMに対して危険源の生成を指示することが可能になります。

検索内容のリライト

FrascoAI フロー詳細画面でのグラフの図
inputのワードをLLMでリライトしてsearchに渡すグラフ

上記では検索の入力(検索ノード)としての作業手順をそのまま検索ワードとして渡していました。これらは必ずしも検索ワードとしては適切ではありません。そのため、入力された内容をLLMにより適切な検索ワードにリライトして検索能力を向上させることを考えました。例えば「鉄骨架台の人力解体」という入力に対しての関連語句として「鉄骨架台の人力解体、鉄骨、架台、解体、人力、手作業、安全対策、工具、手順、効率、注意点」といった語句を生成し、この語句も参照して文献を検索します。

このような仕組みもFrascoAIを用いると簡単に構築することができます。具体的には図のような検索ノードの前段に、(検索ワードのリライトを行う)LLMノードを追加することで実現できます。

まとめ

建設関係の企業様に対する生成AIの検証作業支援として、FrascoAIを使った検証方法を紹介させていただきました。

生成AIの活用においては、お客様のビジネス上の目的や課題、要件の性質によって適切な方法が異なります。そのため、様々な方法を試行錯誤しながら最適な仕組みを作り上げていくことが必要になります。FrascoAIを使うことによって生成AIの活用フローを短時間で明確に定義・実装・実験することができ、効率的に検証作業を進めることができます。

本記事で用いた生成AI検証基盤「FrascoAI」では無料体験版のお申し込みを受け付けております。ご興味がありましたらお問い合わせよりお気軽にご連絡ください。